英会話の勉強法まとめ③単語編

スポンサードリンク

 

単語編

 

さて、発音をけっこう矯正したのにしゃべれないし、聞き取れない。

この問題のほぼ大部分を占めるのが語彙力の不足です。

 

発音やイントネーションの勉強は、英会話学習を最速効率的にするためという目的が強いですが、単語の勉強は絶対に外せない必須項目です。

 

それほど大事なのですが、この「単語を覚える」という勉強で挫折する人が非常に多いです。

理由は単調でつまらないから。

 

そして下手な覚え方をすると使い方を間違ってインプットしてしまうという危険性があるので、注意が必要な勉強工程でもあります。

 

語彙とは何かを正しく認識し、ちゃんとした戦略で応対しないといけません。

 

まず語彙には2つの種類があることを認識して下さい。

 

①  認識語彙(passive vocabulary):

聞く・読むためのインプット用の語彙

②  運用語彙(active vocabulary):

話す・書くためのアウトプット用の語彙

 

この認識語彙と運用語彙をいっしょくたにしてはいけません。

目指すゴールも勉強法も違うのです。




 

認識語彙

まず①の認識語彙ですが、②の運用語彙の5倍も10倍も必要と言われています。

自分が話す時は自分が知っている単語を使えばいいわけですが、話し相手がどんな単語を使ってくるかは自分たちには分かりません。

それらに対応するためには幅広い認識語彙が必要になるのです。

 

英語を聞いたり読んだりする時に、そのうちの95%の単語を知っていれば一部知らない単語があったとしても前後の文脈から推測して穴埋めができ、内容は理解できるとされています。

逆に5%以上知らない単語があると推測が追い付かず、内容が分からなくなります。

ただしこの説には“原則として”という注釈が付きます。

 

例えば次の文は何のことを話しているか分かりますか?

 

「歳をとった時、年金だけじゃ不安だよね。だからお金を計算してみたけど、このまま貯金してるだけじゃかなり厳しいってことが分かったの。だから●●をしようかなって。最初はちょっと怖くて躊躇してたんだけどね」

 

それではこの文は?

 

「●●って本当のところ、どれぐらい体に良くないんだろう? 専門家でも言ってることがバラバラだよね」

 

このように他の単語は全部分かるのに、一語分からないだけで何の話なのか分からなくなることは良くあることです。

ちなみに一つ目の文は「投資」で、二つ目の文は「放射能」のつもりで書きました。

推測当たってましたか?

 

こういうケースをも鑑み日常会話で迷子にならないためには、できれば10000、最低でも6000は覚えたいところです。

中学卒業時で1500語、高校卒業時で3000語だと言われています。

中高で習った英単語全部を覚えていても、最低必要数6000語の半分しかありません。この語彙数でネイティブの日常会話を聞き取ろうなんて、そもそもが不可能なのです。

 

まずは自分がどれくらいの語彙数を持っているか確認しましょう。

 

確かめる方法は「アルク英単語力診断テスト」や「Weblio英語語彙力診断テスト」などのネット上で無料でできるものもありますし、本屋へ行って「単語4000」「単語6000」など単語数の書いているテキストを手に取って見て確かめることもできます。6000と書いてある単語帳を見てほとんど分からなければその下の4000とかが対象ですし、ほとんど分かるなら上の12000とかを目指していきましょう。

 

自分の語彙レベルを確認できたら次は記憶法の確認です。

 

人間は忘却する生き物です。

忘却する前提で最善の方法を確認しましょう。

 

いきなりですが、ここで質問をします。

次のうち、100日後に覚えている単語数が一番多いのは(A)、(B)、(C)のうち、どれでしょう?

 

(A)

初日:一単語に60秒かけて単語を100個記憶(100分)

40日後:一単語に30秒かけて前回と同じ単語を100個記憶(50分)

80日後:一単語に30秒かけて前回と同じ単語を100個記憶(50分)

トータル勉強時間200分

 

(B)

初日:一単語に2秒かけて単語を3000個記憶(100分)

40日後:一単語に1秒かけて前回と同じ単語を3000個記憶(50分)

80日後:一単語に1秒かけて前回と同じ単語を3000個記憶(50分)

トータル勉強時間200分

 

(C))

初日:一単語に2秒かけて単語を1500個記憶(50分)

2日後:一単語に1秒かけて前回と同じ単語を1500個記憶(25分)

5日後:一単語に1秒かけて前回と同じ単語を1500個記憶(25分)

10日後:一単語に1秒かけて前回と同じ単語を1500個記憶(25分)

20日後:一単語に1秒かけて前回と同じ単語を1500個記憶(25分)

50日後:一単語に1秒かけて前回と同じ単語を1500個記憶(25分)

80日後:一単語に1秒かけて前回と同じ単語を1500個記憶(25分)

トータル勉強時間200分

 

答えは(C)です。

 

どのパターンもトータル勉強時間は同じでも、100日後に覚えている単語の数には格段に差が出ます。

 

(A)と(B)はどこが問題だったのでしょうか?

 

敗因1:復習するタイミングが悪い

 

敗因を理解するためには、まず脳の記憶の仕組みを理解する必要があります。

 

初めて見た単語は「短期記憶」として脳の海馬に収納されます。

何度も見た単語は「長期記憶」として脳の側頭葉に収納されます。

 

海馬が「短期記憶」を貯蔵できるのは、何もしなければ30日間のみと言われています。

 

(A)と(B)のパターンでは復習のタイミングが30日を過ぎていたので、初日に苦労して覚えた単語をほとんど忘れてしまい、無駄足を踏んでいるのです。

 

敗因2: 復習の回数が少ない

 

単語を「短期記憶」の海馬から「長期記憶」の側頭葉には移動させなければなりませんが、

移動させるには脳に「この単語は重要なんだ」と思わせなければいけません。

 

その方法を私は「ボーイ・ミーツ・ガール大作戦」と呼んでいます。

1回や2回出会ったくらいでは何とも思わない相手でも、もしも何度も何度も街で偶然出くわしたら、「あれ、あの人もしかして運命の人なんじゃ・・・」と思ってしまうものです。

たとえたいした相手でなくても(爆死)!

 

そう、回数を重ねることで脳はその単語のことを「これは大切な単語に違いない!」と思い込み、側頭葉に移動させるのです。

 

つまり、1回にかける時間の長さよりも頻度の方が大事なのです。

ですから、1単語につき費やす時間は、1~2秒が適正です。

 

(A)は一つの単語を覚えるのに時間をかけすぎていますし、(B)は覚える単語を欲張って多くしすぎたため、頻度がこなせていないのです。

 

 

さあ、(C)のようなパターンが一番効率良く単語を覚えられることが分かったと思います。

 

ですが、復習の回数というのは具体的に何回ぐらいすれば良いものなのでしょうか?

 

実を言うと記憶というのは非常にさまざまな要因で海馬から側頭葉に移動するので厳密に何回ということは言えないのです。

 

例えば自分の愛犬の名前と似た音の単語だと、たった1回聞いただけで覚えてしまうこともできます。

このようにちょっとしたことがフックとなって「長期記憶」として側頭葉に引っかかることもあるのです。

 

ですが通常は5回や10回程度では覚えられないと思ってください。

「ぜったい5回の復習で覚えきる!」なんて張り切らないでください。

 

何度もいいますが、人間は忘却する生き物です。

「50回も100回も復習して覚えられればいいや!」ぐらいのスタンスでいたほうがムダな苛立ちを覚えなくて済むでしょう。

 

以上のことを踏まえて単語学習の戦略を練って下さい。

 

 

上記の認識語彙の覚え方ルールを守っていれば、具体的な勉強法については自分の好みの方法でけっこうです。

 

スマホやパソコンの「暗記用アプリ」を利用するのもいいでしょう。

 

暗記用アプリだと一つ一つの単語の「復習スケジュール」を管理してくれ、適切なタイミングでフラッシュカードを表示してくる機能があります。

「Anki」「Everword」など、良質な暗記用アプリが無料でダウンロードできます。

 

なお、自分でフラッシュカードを作る際、一枚のフラッシュカードには一秒以内で目を通せる量の文字数で入力するようにしてください。

表には英単語と発音記号、裏には日本語訳のみ、とか。

たとえ一つの英単語に複数の日本語の意味があったとしても、その時に覚えたい意味を一つだけ選んで記入するようにしてください。

一秒以内で確認できるようにしてください。

 

勉強する際は、日本語訳が思いつかなくても一秒以上は悩まないで下さい。

その日に覚える必要はないのです。

答えを見て、すぐに次の単語に進んでください。

 

また、フラッシュカードをめくる際、声を出して英単語を読み上げるようにしてください。

この時にちゃんと発音記号をマスターして正しく発音できるようにしておかないとおかしな音で脳にインプットしてしまうことになるのでご注意を。

 

間違った音でインプットするリスクを減らしたいならオーディオ付きの単語帳を買ってみるというのもアリです。

ただし、自分が覚えたい単語ではなく、おしつけられた単語を上から順に覚えていくことになるので集中力が途切れやすくなるというデメリットもあります。

 

どういう方法にしてもいいですが、今回は会話にフォーカスを当てているので、紙に単語を何度も書いて覚えるという手法だけはとらないでくださいね。

 

認識語彙についてはとにかくスピード勝負で数をこなしてください。

 

「頑張って覚えよう!」としてはいけません。

「忘れるのが当然!」と開き直っていて下さい。

「聞いて何となく意味が分かる」程度でいいのです。

 

認識語彙に対しては、軽やかに、あっけらかんとしたスタンスで向き合っていきましょう!

 

 

さあ、ここまで書いてきましたが、ちょっと驚かせるようなことを言います。

 

この勉強法で覚える単語ですが・・・・・・動詞は除外して欲しいです

 

びっくりですよね・・・。

なんでやねん! って話ですよね。

 

理由はですね、この勉強法ってスピード勝負なので、1単語につき多くても数秒しか費やせないのですよ。

その数秒内で正しくその単語を理解しないといけないわけです。

 

ですがそれが動詞だと数秒では難しいんです。

 

例えば、「agree」という単語を覚えたいとしましょう。

ですが単純に「agree:同意する」と覚えてしまうと危険です。

 

動詞というのはよく「to」「with」「at」などの前置詞とくっつきます。

「agree to ~」も「agree with ~」も両方とも日本語訳は「~に同意する」ですが、使用方法やニュアンスが違います。

そこまでちゃんと理解して覚えないと後で使用する際に誤用してしまいかねないのです。

 

コロケーションって知ってます?

言葉には「こういう時にはこういう言い方をする」っていうことが多々あるのです。

 

例えば「アイロン」だったら「かける」という動詞といっしょに使いますよね?

 

「アイロンで圧して服のシワを取る」とは言いません。

「アイロンをかけて服のシワを取る」が自然な言い方ですよね?

 

文法的には何ら間違いはないけれども、不自然になってしまう言い方ってあるのです。

外国語学習者はこのコロケーションがメチャクチャになりがちです。

 

動詞を単語単体で覚えるからそうなってしまうのです。

 

もちろん名詞だっていつもいつも英単語と日本語訳がぴっちりイコールで結ばれるわけではありません。

覚える際に注意が必要なこともあります。

 

ですが動詞に比べると誤用してしまうリスクが格段に低いので、総合的に判断するとこのスピード勝負の記憶法でガンガン覚えてボキャブラリーを増やしていくほうがデメリットよりメリットのほうが上回るのです。

もちろん動詞だって聞いた時になんとなくでも意味が分かったほうが会話中に迷子にならずに済むというメリットもありますが、発音にしてもそうですが、一度間違って覚えたものを後から矯正して覚えなおすのって本当に手間がかかって徒労感を覚えるのです。

できれば最初から正しい用法できっちり記憶した方が近道なんですよねぇ。

 

納得していただけたでしょうか?

以上、認識語彙の話でした。

 

 

そうそう、蛇足のお話を2つほどします。

蛇足1: エビングハウスの忘却曲線

記憶法の話題になるとよく引き合いに出される「エビングハウスの忘却曲線」について、誤解が多いようなので言及しておきます。

 

単語学習と忘却曲線を結びづけて次のように理解している人が多いようです。

 

・20分後には覚えたことの42%を忘れている

・60分後には覚えたことの56%を忘れている

・一日後には覚えたことの66%を忘れている

 

しかしこれは間違いで正しくは、次の通りです。

 

・20分後に復習すれば一回目の42%の労力で単語を覚えられる

・60分後に復習すれば一回目の56%の労力で単語を覚えられる

・一日後には復習すれば一回目の66%の労力で単語を覚えられる

 

忘却曲線とは忘却率ではなく、次回の学習の際の労力節約率のことですよ~。

 

蛇足2: 語源・部首

さて、単語を記憶するには5回や10回程度の復習では「短期記憶」から「長期記憶」に移動しないと書きましたが、ちょっとしたことがフックとなって「長期記憶」として側頭葉に引っかかることもあるとも書きました。

 

では側頭葉に引っかかりやすいように単語にフックをつけることができたら何度も何度も復習しなくてもいいのでは、と思いませんか?

 

フックをつける方法はいくつかあります。

語呂合わせ。関連記憶術。イメージ記憶術。などなど。

しかし、膨大な数の認識語彙の一つ一つに語呂合わせを作ったり、絵をつけたりするのは現実的ではありませんし、かえって効率が下がります。

 

そんな中、多少なりともフックになりえるものが語源ではないかと思います。

語源の例を見てみましょう。

 

bi- 二つの    例: bilingual 二言語話者、bicycle 自転車(二輪車)

tri- 三つの   例: trilingual 三言語話者、tripod 三脚

-less ~のない  例: homeless ホームレス、useless 使えない

 

これらは日本語の「さんずい」や「つちへん」などの部首と同じで、知っていると単語の意味を推測する手掛かりになるものです。

日本の小学校で部首を教えない学校はありませんので英語でも語源を習うことは有用であるのは間違いありません。

これらがフックとなって「長期記憶」として側頭葉に引っかかりやすくなればラッキーです。

 

しかし、フォニックスの時と同じく私は語源の勉強には注意が必要だと思っています。

 

過信も深入りも危険です。

 

こういった語源は400個以上あるとされていますが、元々の意味から変化しすぎて語源と結びつかない単語も多くあります。

語源はつきつめていけばどこまでも学習していけますが、私たちは学者になるわけではないのです。

そんなことに大切な勉強時間を費やさないでください。

 

語源を勉強する時は次のことに注意してみてください。

 

<語彙レベル初級者>

あなたの語彙レベルがまだ低い場合は、語源を勉強するにしても、数を50個以内に絞ることをお勧めします。

 

ネットで「14 master word」「英語 語源」などの検索ワードで探したり、図書館で英語の語源の本を借りてくれば、登場頻度の高い語源がどれかは分かるでしょう。

 

そしたら、その日のうちに有用そうなのを選び、ポストイットなどに書き出して目につく場所の壁に貼ってください。

この作業は必ず一日以内に終わらせ、以降、わざわざ語源学習に時間を割こうとしないでください。

 

 

<語彙レベル上級者>

もしあなたの語彙レベルが高い場合は、初級者よりも語源学習で得られる効果は高いでしょう。

語源はラテン語・ギリシア語起源のものが多くありますが、これらは専門書、文献、学術書などに出てくる難易度の高い単語ほどよく見られるのです。

 

hemo- 血   例: hemostasis 止血、 hemophilia 血友病

carcino- ガン 例: carcinogenicity 発ガン性、carcinogen 発ガン物質

-cide 殺し   例: homicide 殺人、insecticide 殺虫剤

 

例えばこのような単語は日常会話にしょっちゅう登場はしないし、少し難しいですが、日本語であれば大人として知っていて当然の単語です。

こういうレベルの単語を覚える段階になったら、語源の本を手に取ってみるのをお勧めします。

やみくもに覚えようとするよりも、楽に覚えられる単語が増えるでしょう。

 

 

勉強を効率よく進めるには、手を出すタイミングを見極めることが大切です。

 

語彙レベル初級者のうちは、優先することが他にあります。

語源学習に手を出すのは、おおざっぱな数字で言うと、8000語以上の認識語彙を覚えてからで良いのではないでしょうか。




 

 

運用語彙

 

さて、運用語彙は2000語から3000語は使えるようになって下さい。

認識語彙と比べると格段に数は少ないです。

 

中学卒業時で1500語、高校卒業時で3000語なので、学生時代にまじめに勉強していた人はもうやることがないぐらいです。

 

というのはウソです

 

聞いた時になんとなく「知識」として意味が分かる程度で良い認識語彙とは違って、「道具」として能動的に自分で使えるようにならなければなりません。

高校卒業までの英語の勉強時間は、平均して1600時間(授業時間:800+自習時間:800)ですが、運用語彙を「道具」として落とし込む練習時間はほとんど取れていないと思います。

運用語彙だけで普段の会話の8割をまかなえるはずなのに、簡単な英会話すらままならないのが「道具」に落とし込めていない証拠です。

 

ここでは先ほど除外した“動詞”を中心に「道具」に落とし込んでいきましょう。

 

ですが、どうやったら「道具」に落とし込めるのでしょうか?

それは、「道具」に落とし込みたい単語を使って瞬間的に文章を作ってみればいいのです。

 

例えば「go」という単語の場合、

 

彼女は毎日ショッピングに行く。She goes shopping every day.

彼女はショッピングへ行った。She went shopping.

彼女はショッピングへ行きましたか? Did she go shopping?

 

とか。

 

文章を目で見ると、メッチャ簡単な文章ですよね?

こんな練習、今さらやるの? と思っちゃいますよね。

でも、その簡単な文章がスルッと口から出てこないのが問題なのです。

 

もう一つ「wake」という中学で習う単語で見てみましょう。

 

「私は6時に起きます。I wake up at 6.」という文章を、

 

疑問形にしてください。

過去形にしてください。

過去分詞形にしてください。

三人称にしてください。

 

と言われてスルッと

 

「What time do you wake up?」

「I woke up at 6.」

「I’ve woken up at 6.」

「She wakes up at 6.」

 

上記の英文が出てきましたか?

「えーっとぉ・・・」て考えてません?

 

本番の会話では「えーっとぉ」なんて考えてたら会話に置いて行かれてしまいます。

一対一なら相手はあなたの言葉を待ってくれるかもしれませんが、3、4人のグループでの会話だったら、あなたの他にしゃべる相手がいるのだから反応してくれない相手なんかほっといて会話は次々先へ進んでしまいます。

「知識」はあるのになぜ使いこなせないかというと、私たちはたいてい動詞を覚える時に、

 

go – went – gone

wake – woke – woken

teach- taught – taught

 

のように、パン・パン・パン! の三拍子リズムで覚えているからです。

この三拍子リズムを現実の会話の中で使うことなんてまずないのにそればかり練習して、実際によく使うフレーズに落とし込んで練習するという作業をあまりしていないのです。

 

昔私がショックを受けた例を出すと、ドラマを見ていて、

 

[ ai ] [ hid ] [ maiself ]

アイ ヒドッ マイセルフ

 

と聞こえてきたので、

 

「ヒドッ、って初見の単語だなぁ。どういう意味だろう?」

 

と思って調べてみたら、「身を隠した I hid myself.」であり、初見だと思っていた単語は「隠す hide 」の過去形だと分かり、愕然とした覚えがあります。

 

「学生時代さんざん「hide – hid – hidden」って暗記したのに!」

 

って思いましたね。

この3拍子「知識」と実際の会話になった文章は、私の頭の中で結びつかなかったのです。

なぜなら「hid」を実際に使える文章に落とし込んで声に出して練習するということをしたことがなかったから。

 

運用語彙においては自分で使えないものは「知らない」と同義語なのです。

 

短い文章を用意して、「過去形」「過去分詞形」「疑問形」・・・と変形させて口を慣らしていく練習をして下さい。

 

ここで気を付けなければいけないのがコロケーションです。

 

テキトーに文章を自己流で作って練習していると、それが間違ったコロケーションだった場合、不自然で武骨な英会話知識がついてしまします。

 

それを避けるために、例えば下記のような短い文章が並んだ本を一冊用意するのはどうでしょう?


英語日記パーフェクト表現辞典

 

元になる文章が正しいコロケーションなので、脳に誤情報を植え付けるリスクが減ります。

 

 

そして手元に次のようなメモを置いておいて、次々と文章を変形させていく練習をするのです。

 

 

使うテキストは上に紹介したものでなくていいので、ご自分の気に入った本を使うようにしてください。

そうそう、こういう練習する時にクソまじめに一ページ目の一番上から順番にこなしていく人がいますが、まずは実際自分の生活で使いそうな文章から潰していけばいいですよ。

使えそうなのからどんどん潰していって最終的に一通り済ませればそれでいいわけですから。

おそらくそのほうがモチベーションが保ちやすいと思います。

 

まずは一通り自分の生活の中で使う文章から潰していきます。

次に残った文章の潰し方ですが、自分が学生の場合、仕事場で使う文章には縁がないので潰すことができませんが、自分の両親や兄弟が社会人なら、その身近な人の生活を想像したり、またその人になりきったつもりになって映像を思い浮かべながら潰していってください。

まあ、身近に適当な人物像がなければ妄想上のキャラを作ってもいいですし。最近の人はアバターを作るの得意でしょ?

 

この勉強法って巷ではやっている「瞬間英作文」とやってることはほぼ一緒ですね。

でも「瞬間英作文」よりもすでに存在している文章を変形するだけなので難易度が低く、初心者でも無理なくできると思います。

 

あと、この勉強法を行う時の注意点を一つ。

 

使うテキストは短く簡単な単語を使っているものを厳選して欲しいのですが、語彙力が少ない人はどんなに簡単な本を選んでも知らない単語がいっぱい、ということもあるかと思います。

そういう場合は最初にその本に出てくる知らない名詞、形容詞、副詞などを、認識語彙の勉強の時につかう暗記用アプリなどに全部入れてしまって、認識語彙として覚えてしまってください。

そうすれば、「道具」として落とし込む練習の最中に知らない単語に出くわして気が散らされる、ということが防げます。

 

一番やってはいけないのは、運用語彙の練習中に「この名詞の意味が分からないから辞書で調べてみよう」と言って、認識語彙の勉強を挿入してしまうことです。

マルチタスクは脳に負担をかけ、勉強効率を下げるという研究結果が出ています。

二つの勉強法を同時にするのは避けてくださいね。

 

英語実況

さて、上記の練習をして、一通り運用語彙を「道具」へと落とし込みができたとしましょう。

さらに運用語彙を自由自在に操れるようになりたい場合、どういう練習法があるでしょうか?

 

おススメなのは、「英語実況」です。

 

まず街に出ます。

そして目に映るすべてを英語で実況していくのです。

これはシャドーイングと並んで、通訳を目指す人が行う王道の練習法です。

 

ただし、自分で文を構築していかなければならないので、難易度が遥かに上がります。

また自分で文章を作るので知識が十分でない人がするとコロケーションがメチャクチャになる可能性もあります。

 

ですからこの妄想実況は初級者は手を出さなくていいです

中級ぐらいになってやってみたいと思ったら、最初は単語から始めてみればいいと思います。

 

街に出て看板を観たら「a sign」、豪邸を見たら「a mansion」と口に出します。

次のステップは少しだけ単語を長くします。

「a rusty sign サビた看板」、「a stately mansion 風格のある大豪邸」とか。

もちろん最初から文章で英語実況をできれば言うことなしですが、慣れないうちは単語からでいいと思います。

 

私がいつかできるようになりたいなぁと思うのが「妄想実況中継」です。

これは目に映るものをただ単に実況するのではなく、妄想も入れ込みながら、古舘伊知郎さんばりに実況していくのです。

 

“あそこに男性2名、女性1名の三人組が仲良くピザを食べています。いったい彼らはどういう関係なのか? 大学の同級生か? はたまた会社の同僚か? おっと、ここで女性が右隣の男性にボディタッチをした! 彼らは恋人同士なのか? だとしたら残りの赤い服の男性は何なのか? 非常に気になります!”

 

このような調子で頭をフル回転させて実況していくのです。

難易度MAX!

この練習法では日本語の介在は一切ありません。

日本文を考えてから英文に訳すなんて暇もありません。

妄想すら英語でしなければ実況が追い付かないはずです。

 

日本語ですら妄想実況中継は難しいはずなので、これができるようになったら、私はどこに出しても恥ずかしい妄想族と言えるでしょう。

間違えた!

どこに出しても恥ずかしくない運用語彙レベル超上級者と言えるでしょう。

 

同時通訳の方々はおそらくこのレベルなんですよねぇ。

すごいなぁ。

 

英熟語

 2000語とも3000語とも言われる運用語彙ですが、英語学習者を悩ませるのが熟語の存在ではないでしょうか?。

ここではイディオム(慣用句)、コロケーション(連語)も含めて熟語と呼ぶことにします。

英語は熟語が非常に多い言語です!

 

例)

A piece of cake 簡単なこと

Out of hand 手に負えない

 

一語一語の単語は簡単なのに、組み合わさると特殊な意味の言葉になるので、きちんと覚える必要があるのですが、この熟語の中でも特に気を付けなければならないのが「句動詞」です。

 

句動詞とは「動詞+副詞」「動詞+前置詞」の短い組み合わせの成語です。

 

(句動詞)

Give out 配る  –  distribute 配布する

Give along 進む - progress 進行する

Give in 屈する  - capitulate 屈服する

Give off 発する -  emit 排出する

 

この句動詞ですが、giveの句動詞の例を見てもらえば分かると思いますが、一語で表現する単語に比べて表現が柔らかでカジュアルなのです。

 

give out 配る ← カジュアル

distribute 配布する ← 丁寧

 

カジュアルであるということは、つまり・・・日常英会話の中に頻繁に登場するということです

 

であるにも関わらず私たちはこの句動詞に弱い!

なぜなら句動詞は短いがゆえに逆に覚えにくいのです。

 

・似たものが多すぎて混乱する

例)go off ゴー・オフ、give off ギブ・オフ、get off ゲット・オフ

・一つの動詞につき、句動詞の数が多すぎる

例)take away テイク・アウェイ、take back テイク・バック、

take off テイク・オフ、take out テイク・アウト

・一つの句動詞につき、意味が多すぎる

例)make outの意味 → 作成する、理解する、主張する、イチャつく

 

「配る」と言いたい時に、

「あれ、give outだったかな、give awayだったかな?」

とあやふやだった場合、どうしても一語でハッキリ意味が分かり自信を持って覚えている「distribute 配布する」を使ってしまいがちです。

自分で実際に使わなければ運用語彙は「道具」に落とし込まれませんので、どうしても句動詞をはじめとした熟語は弱点になりがちなのです。

 

熟語は専用のテキストを手に入れるなりして、動詞の勉強法と同じように下記のようにいろいろな変形型にも対応できるように練習してください。

 

例)Break down 壊れる

This machine will break down soon. この機械はすぐに壊れるだろう。

This machine broke down.     この機械は壊れた。

This machine has broken down.   この機械は壊れている。

 

ネイティブの会話を聞けば分かりますが、熟語、特に句動詞は非常に頻繁に使われています。

本当にやっかいで面倒くさいけど、絶対に避けては通れません。

 

句動詞なくして日常英会話は制することができないと肝に銘じ、「句動詞なら任せておけ!」と豪語できるぐらいになれるといいですね。




 

英英辞書

単語編の項目の最後に、必須道具となる辞書について書いておきたいと思います。

英和や和英辞書は自分に合ったものを選べばいいと思いますが、「英英辞典」を使うべきなのか、という問題があります。

 

これは効率を考えると次のようになります。

 

語彙レベル初級者 → 英和辞典を使う

語彙レベル上級者 → 英英辞典を使う

 

語彙レベル初級の人が英英辞典を使おうとすると、挫折率が高くなり、効率が落ちます。

理由は国語辞典で考えると分かりやすいと思います。

 

例えば、初歩レベルの単語である「笑う」と中級レベルの「破顔」を辞書で引いてみてください。

 

笑う(動詞):

喜び・うれしさ・おかしさ・照れくささなどの気持ちから、顔の表情をくずす。

破顔(名詞):

顔をほころばせて笑うこと。

 

ご覧のように、簡単な単語ほど説明が難しく、難しい単語ほど説明が簡単になるというパラドックスが起きています。

これは英英辞典でも同じで、簡単な単語のほうが説明がメチャクチャ難しいです。

 

想像してみてください。

初級レベルの単語を調べたい人が英英辞典を使っていたら、「笑う」という単語の意味を理解するために「照れくさい」「くずす」という単語もさらに引かなければならなくなり、さらに引いたその先の説明でも分からない単語が出てきて・・・と、終わりが見えなくなり、もはや何を調べていたか分からなくなるでしょう。

 

「何いってんだ! 英語は英語のまま理解すべきだ! 英英辞典一択だろう!」

 

というように、英語学習において日本語の介在を一切拒絶する人たちがいます。

しかし最新の応用言語学では、

大人が外国語を習得する場合、必要に応じて母国語を利用したほうが理解が早い

との考えが広がり、母国語を排除しすぎる風潮を諭す論調になっています。

すでに日本語の語彙力が備わっている私たち大人は、日本語で説明されたほうが理解が早い場合があるのです。

 

もちろん

「いいや、私は語彙力はあまりないけど英英辞典を使う!」

という気概がある人はそれでもいいとは思いますが・・・、私だったらその気力を別のところに使うかなぁ。

 

英英辞典に手を出すのは語彙力レベルで言うと6000語に達した後で良いと思います。

 

しかしひとたびそのレベルに達したら、ぜひ英英辞典を使うことをお勧めします

 

英英辞典を使うようになって「ブレイクスルーが起こった」という英語上級者の数がメチャクチャ多いからです。

 

英和辞典を使ってる時って、例えるなら「吹替版」で映画を見ている感覚と近いかなぁ。

ストーリーの内容もセリフの意味もちゃんと分かってるんだけど、原文の意味を完全に訳しきれていないので、目の前に透明な薄い膜がかかっているような、どこか作り物めいた感じがするのです。

それが英英辞典を使うっていくうちに、その膜がなくなって、英語の持つ息吹を直接肌で感じられるようになるんですよね。

透明で薄い膜でしかないなら、それほど変わりがあるように思えないかもしれませんが、「ブレイクスルー」と呼ぶにふさわしい大きな違いなんです。

その薄い透明な膜一枚がなくなるだけで、英語の吸収率が本当に高まります。

 

いきなり英英辞典一択に切り替える必要はないです。

最初は英和辞典と英英辞典の併用から始めてみてください。

 

同じ単語を英和と英英で2回引くのは効率が悪いんじゃないかと思われるかもしれませんが、電子辞書ならたいした手間ではありませんし、このひと手間の積み重ねが後々大きな差を生み出すことになるので引かない手はありません。

 

ちなみに私は英英辞典はオックスフォードのオンライン辞書(もちろん無料)を使っています。

辞書にも特徴がそれぞれあるので、ケンブリッジの辞書とか自分の好みに合うものを見つけてみましょう。

スポンサードリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です